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日常生活においては感じることは少ないが、人間の身体は絶えず汗をかいている。寝ているだけでも、かなり汗をかくという事実は誰でも知っている事だろう。汗のもとは血液中の水分で、食事や飲み物で摂取した水分が直ぐに汗になるというわけではないことを知っておこう。
また、最近の新聞では「身体の水分が不足がちとなる夏場こそ、血液の塊ができやすくなり、それによって血管がつまる脳梗塞の発生例が多い……」という内容の特集記事があったくらいである。脳内出血は血圧が上がりやすい冬場に多いが、血液中の水分が少なくなって起こる梗塞は夏場や運動時にも生じやすいというわけだ。中高年の登山愛好家が多いとあって、これは知っておきたい情報の一つではないだろうか?
人間は汗をかいた分、水分や食物を取らないと体調を崩す。これを一般に「脱水症状」と呼ぶが、軽く考えてしまう人は意外に多い。日本人なら我慢するという発想もあるが、これは悪しき風習と断言してよいだろう。実際、我慢したおかげで多くの命が失われた事例がある。まして、日常生活よりも運動量がグッと増えるアウトドアシーンでのこと、水分の補給は真面目に考えてほしい。前述の脳梗塞の例は極論としても、人間の身体の中では様々なことが起きているのである。
汗は水分のみならず、体内の塩分や諸成分も放出されるため、水分補給と同時に塩分なども摂取する必要がある。しかし、塩水を飲むということは喉越しや気分の問題もあって、渇きをいやすという感じではない。そこで糖分(果糖、砂糖など)で味を変えて飲みやすくし、かつ運動で失われたエネルギーを補充するというアイディアが出た。それがスポーツドリンクである。もっとも、市販のスポーツドリンクは清涼飲料水という意味合いから糖度が高すぎるため、マラソン選手などは2倍以上に薄めたものを競技中に飲用しているが……。
宿泊をともなうトレッキング、あるいは登山で体調を崩さないように、睡眠と水分はしっかりとりたい。人間の血液の粘度は午前4時〜8時、つまり朝方にかけて最も高くなる。睡眠中は水分を取ることができないにも関わらず、呼吸や汗によって数100ccの水分が失われる。日常生活でも同じことが言えるが、就寝前と起床直後に水分(コップ1杯程度)を補給することがアウトドアでのアクティブな活動を可能にするのである。
では、実際の山歩きで水分はどのように取って行けば良いのだろう。専門医による意見は、次の意見に2点に集約される。これは、アウトドアのみならず、日常生活でも守りたい「正しい水分補給」のありかただ。
●喉の渇きを感じたら積極的に水分を取る。
●腎臓に持病がないかぎり、水分の取りすぎは身体に害を及ぼさない。
山歩きの場合、歩き始めて30分位までは乳酸系エネルギーが使われ、それ以降は持久型の有酸素系エネルギーへの切り替えが巧くいくと、疲れずに歩き続けることができる。そのキーポイントは歩き始めての調整休憩にある。ある程度、身体も温まっているので衣類の着脱、靴紐や靴下のたるみを調整する。登山の世界では、最初の休憩が1番に大切とされている。
その後の休憩は、1日のリズムを作るために時間配分を守って、規則正しい休憩を取るようにする。アウトドアにおける行動は、個人個人の時間管理が重要となるので「疲れたから休む」とか「疲れてないから先に行く」といった行動は好ましくない。標準的な目安としては、50分歩行したら10分の休憩を規則正しく取る。時間を決めて、疲れる前に休むという、余力を残した休憩が理想的なのである。
水分の取りすぎは身体に害を及ぼさない。とは言うものの、登山などで携行する飲料水の量が限られた場合はガブ飲みは禁物。気温が高いときなど、ガブ飲みしたい気持ちになるが、体温は下がったが腸に負担がかかるということがある。水は口の中でふくみ、少しづつ飲むというのが、アウトドアでの決まりと言っていい。
また、水に余裕があれば、サッカー選手などが試合で見せる「一口分の水で口中ゆすいでから、次の水を飲む」というやりかたも、運動中の正しい水分摂取方法だ。感染の防止と飲みすぎ防止を兼ねたものである。いずれにしても、アウトドア愛好家ならば、ちゃんとした水筒は用意しておきたい。オートキャンプやデイキャンプならば水の確保や大型タンクの用意も可能だが、山に入ると水は好きな場所で好きなだけというわけにはいかないのだから。
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エナメルグラスティック仕上げのGRAND TETRAS(左)とエポキシ樹脂仕上げのMARKILL
ALFERAN BOTTLE(右)。共に登山の世界では有名な水筒。また、最近はポリカーボネイト製のボトルや耐久性の高い折りたたみ式水筒などがある。 |
| 休憩時には行動食を取ろう。疲れを残さないために早めの食事を。 |
水分だけでは、失われた汗の代わりにはならない事は前述の通り。登山における水筒の中身は「真水」が原則なので、休憩ごとに糖質を中心としたエネルギー転換が早い「行動食」を少しづつ食べよう。空腹のまま、血糖値が下がったままで行動するとハンガーノック症状を起こし、行動不能に陥ることもある。疲れたときは甘いものが良い、というのは血糖値を示唆することなのである。行動食はポケットに入れて、すぐに出せる状態にしておくと便利。「疲れて動けない」といった状態でも、チョコレートの一欠けらで元気が出たということもある。高めの糖度、高カロリー、ビタミンCとクエン酸が積極的な疲労の除去の要である。
また、1日の行程を終えたら、水分の補給と速やかな夕食を取るのが疲労を残さない方法と言われる。スポーツ選手の場合、練習終了後の30分以内の水分補給とエネルギー補給が疲労から速やかに回復する方法というマニュアルもあるくらいだ。
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