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海の持つ力を用いたタラソテラピーも温泉入浴効果を期待するものである。

温泉もタラソテラピーも自然の力を借りて、人間の治癒効果を促進させる……考え方は同じなのである。日本こそもっと増えて欲しい施設ではないだろうか?
 タラソテラピーという言葉をご存知だろうか? 一部ではエステの1ジャンルという間違った解釈もあって、その正しい効用が知られていないようだ。実は、夏になると日本の風物詩である海水浴も、明治になってヨーロッパから伝わったタラソテラピーの考え方が一般に広まったものなのだが……。

 日本語では『海洋療法』と訳されるタラソテラピーは、ギリシャ語の”タラッサ=Thalassa 海”とフランス語の”セラピー=Therapie 治療”を組み合わせた造語で、1876年フランス人医師ラ・ボナディエール博士によって命名されている。ヨーロッパでは、海や海水の持つ力が人間の身体に良い作用をもたらすということを、古来より経験的に理解されていた。実際、海水を利用した民間療法は紀元前のギリシャ時代、医学の祖といわれたヒポクラテスの提唱にまで遡るのである。

 1899年、フランス人医師ルイ・バゴは、加熱海水を活用した世界初のタラソテラピーセンターを開設し、マッサージ的な療法が開発され、リウマチの治療に効果を発揮した。時期を同じくして、フランス人科学者のルネ・カントンは”人間の血液の中に含まれていて、細胞の働きに役立つミネラル成分やヨードなどの微量元素が海水の中にも含まれている”ということを発見し、人間の血が海水に類似していることが確認された。タラソテラピーは近世になって科学的かつ医学的に立証されたという訳だ。

 1899年ブルターニュ地方のロスコフに初めての本格的センターが設立され、現在フランスには70ヶ所以上のタラソテラピー施設がある。健康保険が適用され治療を目的とした施設から、予防医学的にストレス解消やリラクゼーションを目的とした施設、あるいはダイエットや禁煙プログラムをとりいれたエステティック的なセンターと多様化している。つまり、日本におけるエステティック・サロンでの海藻パックや海泥を使った痩身・美肌法は、その一部分であって厳密に言えばタラソテラピーとは呼べないとも言える。

 全ての動物は海洋という外部媒体を保存し、生物の細胞とは、海の媒体と同一の媒体の中に浸っている。それまで海水は身体の中には浸透しないと考えられてきたが、ある条件下で浸透するということも研究が進むに連れて発見された。一定の時間、ある温度粋の海水に浸っていると、皮膚を通じて海水が体内に浸透し、健康を回復させる効果が確認されたのである。

 海水は生命に必要なさまざまな物質を含んでいる。実際、海水には地球の全ての化学的要素が見出されている。海水中の主要な成分は塩素及びナトリウムだが、マグネシウム、カルシウム、カリウムなど多種多様な塩類が海水1kg中に約34g含まれている。これらの成分はイオンの状態にあるため、皮膚を通して体内に移行しやすくなっている。
 海水の浸透圧により皮膚を通り抜けたイオンは、血管を通って欠陥のある器官まで運ばれます。例えば、カルシウム損失症ではカルシウムが補われると言われている。

 1960年代、フランスのディナールからレンヌ一帯にかけてポリオが流行したことがあった。当時、ブリュターニュ大学のルロワ博士はポリオの後遺症に苦しんでいる人々に、海水の中でリハビリテーションを提唱した。実際、海水中でのリハビリテーションは痛みのみならず、身体機能の回復についても良い臨床例が得られた。以来、リハビリテーション用のプールに海水が使われるようになったのである。

浮 力(リラクゼーション効果)
 密度1.023の人体は海水の密度と同じであり、海水の中ではちょうど無重力状態となり、余計な負荷はかからない。陸上では姿勢を維持するために、常に一部の筋肉は緊張を強いられるが、水中では緊張する必要がなく、筋肉はリラックスした状態となる。
 また、身体を動かす時も、関節への負担が少なく、筋力の弱い人や体重の重い人でも、安心して動くことができる。
圧 力(心肺機能の活性化)
 プールあるいは深い浴槽の中に立ったとき、腹部で3〜5.5cm、下肢の周囲で1.5cmの圧迫がかかると言われる。この圧迫は血液循環、リンパ循環を良好にする。同時に、肺も圧迫されるため、通常の状態より約10%小さくなる。この状態で運動すると、陸上よりも心肺機能を活性化させることが可能となる。
抵 抗(身体機能の強化、機能回復)
 海水は空気の約800倍の密度がある。そのため、水中での運動は海水の抵抗によりゆっくりとした動きになる。その抵抗はスピードの2乗に比例し、早く動かそうとするとより大きな力が必要とななる。
 しかし、浮力の効果もあって、ゆっくりと動かせば少しの力での運動も可能である。体力に応じてスピードを調整し、安全に運動を行うことが可能ともなる。360度どの方向にも抵抗がかかるので、複雑な関節運動のトレーニングやリハビリテーションにも効果的だ。
水 温
 体温と同じ位の温度粋(摂氏34〜37度)を不感温度と呼ぶが、この水温では違和感なく水中にいることができる。安心して長時間水中にいても疲れにくい為、十分にリラックスすることが可能です。このように適度に温めた海水には温熱効果があり、血管拡張作用、血液循環促進、リンパ循環促進、自律神経の調節の効果がある。

 さて、以上のタラソテラピーにおける効果は馴染み深く感じた向きも多いのではないだろうか? そう、温泉への入浴効果と同じなのである。古くから温泉の効果を知る人の中には人工温泉の研究を進めていた専門家もいるが、海水を加熱して利用すれば、極めて効果的なことが確認されたという次第だ。したがって、四方を海に囲まれた我が国こそ、正しいタラソテラピーの考え方を進めて行きたいものである。例え、温泉の湧かない地域であっても、海水を利用した施設の整備を進めれば良いはずだ。

●タラソテラピーに関する研究報告について (財) 健康科学財団ホームページ


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