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天然温泉の悩みとは? 『温泉』の表示への疑問。



もうもうと立ち込める湯気があってこそ、温泉情緒……。しかし、今となってはそんな古典的な温泉は少数派のようである。

 日本は何処を掘っても温泉が出る……。温泉法の改正によって、地下数百m(あるいは1000m単位)から地下水を汲み上げても、それは立派な温泉となる。従来のイメージからすれば、地表に自然に湧き出た温泉にそのまま入浴するものであった。その温度が高すぎる場合は水を足すことによって下げるのではなく、草津温泉の湯畑のように適温までさましたり、湯もみによって温度調整を行うのが普通だった。

 そうした事を考えると、昨今よく耳にする”天然温泉”という表現も不自然である。あえて”人工温泉”とうたった入浴施設の例は聞かないが、そういった表現と共に温泉法にも問題があるようにも思える。本来、温泉とは貴重な自然の恵みであり、ありがたい存在であったが、あまりにも”温泉”と称する入浴施設が増えたために疑問を持った向きは多いのではないだろうか? 温泉法が制定される1948(昭和23)年以前、摂氏25度以下は鉱泉であって温泉とは呼んでいなかった。

 本来、温泉とは自然に湧出した泉元近くで入浴するものである。地下深くボーリングして地下水を汲み上げた『温泉』は、自然湧出泉の伝統的な温泉に比べて、効能にもの足りなさがある単純な温泉である例が多い。歴史のある温泉地においては外湯(湯元)に通う、昔はそれこそ宿に風呂がない例もあった。外湯からの分湯で各旅館に内湯が造られるようになって、内湯を持ったホテルや旅館が乱立した時代もあった。競うようにして大きな風呂をたくさん造り湯量が不足し、そのままでは温泉が涸渇するという温泉地も出てきたようだ。源泉の湧出量に見合った大きさの湯船にかけ流し……という古典的な温泉のイメージは大きく崩れつつあるようだ。

 そして、出量が少なさを補うためには水道水を加えて加熱する。さらに水道代や燃料費の節約から、一度使ったお湯を循環させて何度も使い回するのが当たり前となってしまった。実際、循環式が多数派で温泉全体の8割近くが採用とも言われている。ところが、循環式の場合、その殺菌のために温泉の湯に塩素が加えられる。その管理が悪いとレジオネラ菌が繁殖して肺炎を起こすこともあり、新聞などでたびたび報道されているのでご存知だろう。湯船のお湯は毎日取り替えて掃除というのが一般常識だが、それも行われていないところもあるらしい……。

 さらに気が付いた方もいると思うが、塩素消毒によって温泉成分も化学変化によって失われる可能性も高い。温泉が地上に湧出するだけで、気圧の違いで成分が逃げ出してう………鉄分を含んだ温泉は空気に触れることによって酸化するし、硫黄などは沈澱したりする。温泉とはそれほどデリケートなもので、源泉に近いほど新鮮なのであるが。そうした事を考えると、温泉という表現だけで喜ぶの早計といったところである。温泉法の改正で、温泉好きは温泉を疑って入らなければならなくなってしまった。

 では、本当に良い、古典的風情のある温泉とはなんだろう? 専門家によれば、大型のホテルや旅館で200リットル/毎分、中規模で100リットル/毎分程度あれば『かけ流し』が可能とのこと。しかし、これはあくまでも目安で、湧出量を掲示している源泉からいくつの温泉宿へ分配しているかは不明である。また、浴槽からお湯が溢れていなければ循環式である可能性が高い。隠れた排水口があることを意味するが、わざと溢れさせたお湯を集めて『かけ流し』に見せて循環させている例もあるという。温泉分析書への記載は湧出地点(源泉)での温度であった、源泉から離れ場所は湯を沸かし直すことになるという事実もお忘れなく。

 やはり、判断がつかない場合は『源泉かけ流し? 循環式?」と聞くのが一番だろう。客としては当然の質問で、その対応によっても温泉宿の良し悪しも判断できる。沸かし湯、循環式であっても、それは温泉資源を大切にするという意味で、結果として良質な温泉場である例もある。そういった意味でも、温泉は情報公開することが良心的な営業に結びつくのではないだろうか?


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